クレイマークレイマー

クレイマークレイマー
(原題:Kramer VS. kramer)(1979年)


監督・脚本:ロバート・ベントン
代表作品:ノーバディーズ・フール


主演:ダスティン・ホフマン(テッド・クレイマー)
メリル・ストリープ(ジョアンナ・クレイマー)
ジャスティン・ヘンリー(ビリー・クレイマー)
ジム・オコーナー(ジョージ・コー)


== さくらの思い ==


うーん・・・胸が痛すぎる・・・その一言に尽きます。

いまでこそ、離婚は日常珍しくないことになったけど
この頃の離婚って、日本ではあり得なかったんじゃないかなぁ?
そう思うと、日本での上映は、ある意味センセーショナルだったのでは?!

この映画を見ると、やはり夫婦はお互いを思いやって、家庭を築くことが
いかに大変で、大切であるかを思い知らされる。
ましてや、そこに子供が存在すればするほどに・・・
さくらは、結婚していないので、あまりこれについて意見を述べる立場ではないけど
離婚して、一番心を痛めるのは、子供であることを思い知りました。

このクレイマー夫婦は、夫婦としては、すれちがってしまったけど
親としては、二人とも最高の親だった。
こんなに豊かな愛で、築きあげた家庭でさえも、ちょっとしたすれ違いの
繰り返しで、崩れてしまうことが、さくらにとって、とても悲しかったです。
愛情のすれ違い・・・今までよく分からなかったけど、この映画のことを言うような気がします。

父が子供を思いやる気持ちも、最初は、ほほえましかった。
でも、最後にその気持ちが二人にとって、とても辛く悲しいときを迎える日が・・・

裁判で、父が負けてしまったときに、母の下へ引き取られるシーン。
さくらは、胸が引き裂かれるような思いでした。
最初は、ママが忘れられなくて、パパを困らせていた息子が
パパの深い愛情で、大好きになっていったのに、裁判所が決めたことで
突然引き離されてしまう。

二人が迎える最後の朝、いつものようにフレンチトーストを焼くパパのとなりで
じっとパパを見つめる息子。この目線が、本当に胸を痛くさせました。
そして、抱きかかえられたパパの肩の上で、声を押し殺して泣く、
子供の気持ちが、辛すぎました。今、思い出しても涙が出るほど・・・
息子にとって、何が一番いいのか?本当に分からなくなってしまったシーンです。

どっぷりの家族愛。
息子の、心の移り変わり。
本当にステキな家庭の、悲しい結末。
涙なしでは、見れません。ハンカチのご用意を・・・


== さくらのための覚書 ==

普通に幸せな日々を送る家庭に訪れた、突然の悲劇・・・

テッドは、妻が幸せなら・・・と家のことには口を出さず、仕事に精を出していた。
ごく普通の仕事熱心な夫だった。
ある日、会社で日々の努力が認められ、重役抜擢の話が持ち上がり
喜びを伝えようと、急いで帰宅したデッドだったが、妻は荷物をまとめ、出て行く支度をしていた。
「誰かの娘や妻ではない自分自身を見つけたい」
と言い残し、彼女は去って行った。

取り残された、父と息子の二人暮しが始まる。

重役昇進をかけたテッドは、家事と子育てと仕事に追われる。
信頼する上司に、今回のこの家庭での悲劇を相談すると
「子供を親戚に預けて、仕事に専念するんだ!」
と心無い言葉が返ってきた。
しかしテッドは、それを聞き入れることはなかった。

忙しく追われるテッド。
放っておかれる息子、ビリー。

そのすれ違いが、二人の関係に
亀裂を生じさせていったのだ。

テッドは、重役昇進がかかった大事な契約の日に、ビリーが発熱したため穴をあけてしまう。
そして、そんなことを知らないビリーは、まったくテッドのいうことを聞こうとしない。
悪循環な毎日だった。

ある日の夕食のとき、テッドが忙しい中、懸命に作ったご飯を

「まずい!」と言って全て残し、冷蔵庫の中のチョコレートアイスを出してきた。
「ご飯を食べてからだ!」と注意するテッドをからかうように、ビリーは
アイスをすくったスプーンを口元にゆっくりと近づける。
そして、口に入れてしまった瞬間、テッドは初めてすごい剣幕で怒ったのだ。
口の周りをチョコレートアイスだらけにしたビリーを持ち上げ、子供部屋のベッドに
放り投げてしまった。
泣き喚くビリーに、どうにもできない不甲斐なさ・・・
その不甲斐なさをかき消すように、お酒を飲むテッドだった。

ビリーが泣き止んだころ、子供部屋に様子を見に行く。
お布団を直し、愛情たっぷりの目で子供を見つめるテッド。
そんなテッドに、「パパ、ごめんね。」というビリーだった。
そして
「パパも行っちゃうの?」と不安な目で問い掛けた。
その問いに、テッドは優しく答えた。
「パパは、追い出そうとしても、そうはいかない!」と。

そして、ママが出ていってしまった理由を語りはじめた。


パパがママを長い間かかって1つの型にはめようとしたこと。
ママを理想の奥さんにしようとしたこと。
でも、ママはそう言う人ではなかったこと。
ママもパパを幸せにしようと努力してたこと。
それが出来なくて、パパに相談しようとしてたのに、忙しくて耳を傾けなかったこと。
それは、パパが幸せならママも幸せだと思っていたからってこと。


「だから、ママは出ていったんだ。
ママが出ていったのは、
パパのせいだよ!」


そう、告白したテッド。
そんなパパに、ビリーは最高の言葉を投げかけてくれたのだった。

「パパ、愛してるよ!」

これを境に、二人はとても思いやり、愛に満ち溢れた生活が始まった。

しかし、暗雲が立ち込める出来事が・・・
テッドの仕事場に、ジョアンナから電話が入った。
二人は、離婚後初めて再会する。
ジョアンナは、自分の現在について話し始めた。

カリフォルニアで、新しい職について、自分を再発見したこと。
いいDrに出会えたおかげで、気持ちがすっきりし、自分が一番大切なものに気づいたと。
それは、息子への愛情だと言うこと。

どういうことだ?と、問うテッドに、ジョアンナは


「ビリーが欲しい。」

と言ったのだ。
「渡さない!」と、ものすごい剣幕で怒り、憤りを覚えたテッドは、
そのまま店を出て、弁護士の下へ相談に向かったのだ。

しかし、弁護士から「子供が小さい場合、母親に同情的で、裁判は難航する。」と
宣告を受けたのだった。
どうしても子供が欲しければ、どんなことをしても先方を叩き潰すことだとも。

そして、弁護士から必ず守ってほしいことを書いたメモを渡され
そのとおり、日々を過ごすテッドだった。

ある日、上司にランチに誘われ、同席すると「先日の契約の担当を、はずす」と
告げられた。更に
「会社を辞めてもらう」と。
テッドは、必死に「今辞めたら裁判に負けてしまう!!」と訴えたが、聞き入れては
もらえなかった。
気持ちを切り替え、すぐに食を捜し求めるテッド。
しかし、なかなか厳しい時期だった。そんな中、たった1社だけ、紹介してもらうことが出来た。
テッドは、すぐにその会社に向かい、美術商と言う仕事に就けるよう
かつて、自分が撮った写真を見せて、懸命にアピールするのだった。
しかし、本当の面接官が2週間の旅行に出るからと、また後日・・・と断られてしまう。
テッドは、負けなかった。
その、根性に負けたのか、本当の面接官が出てきてくれて、テッドの作品を見てくれた。
しかし彼の口からも「後日・・・」と。
テッドも、負けなかった。子供がとられてしまうことを思えば、必死になるのは
当然だろう。
「今すぐ返事をください!」と懇願し、見事採用となったのだ!

仕事部屋をもらい、そこにビリーをつれてきた。
ビリーは窓から見える、素晴らしい景色に興奮した。
急に、ビリーは「まだ、結婚しないの?」と聞く。

ビリー:「ママとは?」
テッド:「絶対にしない!」
ビリー:「ママがここを見たら、するな!」

その夜、弁護士から電話があった。
なんと、ジョアンナがビリーに会いたいと言ってきたのだった。
やむなく、日曜日にセントラルパークへビリーを連れて行くテッド。
ジョアンナは、うれしそうにテッドを抱きしめ、「6時に返すわぁ~!」と
公園を立ち去っていったのだった。

そして、いよいよ裁判が始まった。
まずは、ジョアンナから。
「5年間で次第に不幸になっていった。誰かに助けを求めないとどうにもできない。
旦那は、無視。自殺寸前だった。この恐怖と不幸が私に家を捨てさせた。
私自身欠陥があるように思えたから。でも、カリフォルニアで、そうでないことを知った。
家を取り仕切る能力のない私には、息子をおいていくしかなかった。
息子と会えなくなって、普通になろうと努力した。悪いことはしていない。
私はビリーの母親です。」

そして、テッド。
「前の妻が不幸だったのは事実です。
理解できないことがたくさんあった。変えたいと思ったけどダメだった。
できるものもあったと思う。前妻がビリーを愛してることも信じる。
よい親になるためには、相手のことを黙って聞く忍耐があればいいのか
あるいは、まったく無視するのがいいのか分からない。
男の真心が、女より少ないとなぜ言いきれる?ビリーには、完璧とは言えないけど
僕が作った家庭がある。お互いに愛し、家庭を築く。それが壊れたら、二度とできない。
ジョアンナ、辞めてくれ!ビリーのために!!」

そして、テッドは裁判に負けてしまった。
週1回の食事と、隔週末の1日一緒に過ごせるだけ。養育費は、月400ドル。
裁判をやりなおすことも出来たが、それにはビリーを裁判に出したほうがいいと
いわれたため、それだけは、出来ないと、断ってしまう。

テッドは、ビリーに事の顛末を告白した。

「僕は、どこで寝るの?」
「おもちゃは?」
「夜、誰が本を読んでくれるの?」
「嫌なら、帰っていい?」
「時々、電話してよ!」


そういい終えると、ビリーは泣き崩れてしまう。
テッドは、優しくビリーを抱きしめて、家につれて帰った。

二人が迎える最後の朝・・・
いつものように、フレンチトーストを焼く父の横にビリーはいた。
父の姿を脳裏に焼き付けるように、じっとテッドを見つめていたのだ。
その視線に気づいたテッドは、元気付けるように
「さあ!これを食べちゃおう!」と言い、ビリーを抱きしめた。
すると、ビリーは父の肩の上で、声を殺して泣くのだった。
テッドは、こらえきれず涙を流してしまう。

リビングで、ジョアンナを待った。
インターフォンが鳴る。


「ロビーにいるから、一人で来て!」

テッドは、ビリーを残し、一人ロビーへと向かった。
「ビリーと暮らすことばかり、考えていたの。
ここにいたことも。
あの子の部屋の絵は、私が描いたのよ。あの子のために雲を・・・
まるでここにいるような錯覚を起こしたわ。

ビリーを連れに来たけど、あの子の家はここよ!
ビリーを愛しているわ。」と言い、泣き崩れてしまう。

そして「ビリーは連れていかない。上に行っていい?」と聞くジョアンナ。

そんなジョアンナに、やさしく「一人で行け!」と声をかけるテッド。
涙をぬぐい「おかしくない?」とはにかむジョアンナに
「ステキだ!」と優しい目で彼女を見送る中、エレベーターの扉が閉まった。


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